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卒業制作・論文

2025年度       卒業制作展 作品紹介2

『 気配 』

作:桑原 百加

私たちの周りは、たくさんの情報で溢れかえっている。太陽フレアの強さ、地震発生数、気温、データ通信量、そして人の鼓動まで。
私は、目に見えない世界に触れたいと思い、1年生の時から制作を続けていた音楽でそれらを形取ろうと思った。データを音に変換し、そこに光と映像を加えて表現した。


嘘も真実も混ざり合う情報社会の中で、情報とどのように向き合い、何を信じていけば良いのか。このテーマは、今後私たちが長く付き合っていくもので、これを作品で表現したいと思った。この作品で扱っているデータも、元は正しい情報だが、私の解釈、つまりサウンド化というフィルターのかかった情報に形が変わっている。

また、ただ生活しているだけでは意識しないような宇宙や、規模が大きすぎて実感しにくい世界人口推移などのデータを使用し、自分が生きている地球そのものを間接的に感じて欲しいと思った。加えて、気温などのデータは特定の地域に限定されないように、世界各地からランダムに取集した。

この作品を通して、自分の住むこの世界の気配を感じてもらえたら嬉しい。

『 observer      les gens 』

作:谷奥 桃花

この作品は、私が中学生から続けている人間観察がテーマだ。
人間観察を始めたきっかけは、長時間通学の時間を有効活用したくて必死に楽しいことを探した結果だった。妄想が私の中でのエンタメになっていた。妄想が好きで探求し続けたら、「人間」が、その人間が作る「日常」が大好きになっていた。そのうちに自分と他者の日常の違いに気づいた。そこに学びや前向きになれる気づきがあったので、この感覚を残し、共有してみようと考え制作した。 

コンセプトは、私の視点からの分析、そこから繋がる妄想の追体験である。ありふれた日常の中で目に見える情報から、その人の好みや属性、行動パターン、居住地域、人間性、複数人だったらその人達の関係性、その人がどんな気持ちで今そこに居るのか、行動の背景、状況、想像できる限りのあらゆることを想像してしまう。 

そこで、私の目線カメラで撮影したものにテロップをつけ、私の思考を視覚化し、没入感を出した。隠しカメラで撮ったように見える画角で撮影し、対象が撮られている意識がない映像にした。盗撮してはいけないけど、どこにでもカメラがある現代社会、その感覚のズレも表現した。 

『 ラムネ 』

作:土持 彩夏

本作品は、刹那的に欲したものを手に入れた瞬間に感じる「期待していたものは虚構であった」という喪失感・虚無感をテーマにしています。この感覚を、少女がラムネ瓶の中のビー玉を救い出そうとする経験に投影して表現しています。瓶を割って取り出したビー玉が、市販の変哲もないものだと気づき落胆する。「手に入らないからこそ魅力的に見える」という人間の心理が、制作の動機となっています。 

表現手法として、ラムネが持つ「懐かしさや爽やかさ」というイメージに、相反する人間の「欲望」や「葛藤」を微かに辛い炭酸として溶け込ませています。具体的な演出では、実写映像の炭酸を「欲望」に見立て、その泡が消える様子で「記憶の風化」を暗示しています。 

また、アニメーションでは男性が惹かれた瞬間に壊れてしまう女性を描き、ラムネのエピソードを「恋愛」に例えて表現しました。展示された無機質なビー玉は、特別だったはずのものが他と区別できなくなる「無力感」を象徴しています。鑑賞者に対し、自らの人生における後悔や達成感、不足感といった複雑な感情を、炭酸の刺激のように懐古させることを目指した作品です。