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卒業制作展2022 作品解説その8

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、楠田亜衣乃さんによる作品解説です。(以下は本人)

「夢裡」楠田亜衣乃
(手法:モニター映像)

「夢」というものは、人により抱く感情が異なるものです。安らぎや希望などポジティブなものから、不安などネガティブなものまで多様であり、時に人はこの文字で表現をし、この言葉を人生になぞらえて語ってきました。本作のタイトルである「夢裡」は夢の中を表す言葉です。

この作品では、「夢」という言葉によって想起されるイメージを、画面の揺らぎや、平面、立体の複合的手法、実在性と非現実性の融合、古い映像のような加工編集による不明瞭さなどをもって表現しています。また、シーンごとの構成やライティングは、一枚の画として成り立つものとなるよう意識しています。これらは全て3DCGで作られ、その空間の中に、あなた自身であり、また私であり、はたまた第三者でもある2Dアニメーションによって描かれた少女が佇んでいます。音声については、主に近隣で自ら録音したものを使用しており、環境音の入り混じった粗雑さも 不安定さを表現する要素の一つです。

この作品は、あくまで私という個人によって「夢」というワードから連想し生み出されたものの域を出ません。しかし、ここから感じ取るイメージは、まさしく「夢」 という言葉と同じように人それぞれであると思います。 これを通して、自身の中にある価値観を見つめていただければ幸いと思い、制作いたしました。

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卒業制作展2022 作品解説その7

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、宮本佳代子さんによる作品解説です。(以下は本人)

「数字でわかる日本のこれから〜防衛費増額〜」宮本佳代子
(手法:モニター映像)

この作品では視聴者に2つの事を問う、1つ目は「来年度から5年間の防衛費を総額およそ43兆円確保する方向で防衛費増額が公表された現在、日本に増税は必要なのか?」と、2つ目に「防衛費がいつかGDPの2%を占めることになるであろう、優先順位はなんなのか。」だ。

私は街中で見たデモ運動で防衛費増税が検討されている事を知った。テレビやニュース等の類に触れることが少なくなり、SNSに取り上げられる内容でしか日本の今を知らなかった私は政治に関わる事をあまりしなかった。調査をしていくうちに政治と私たちの生活が密接にしていて法案一つで大きな変化をもたらすかもしれない事に気づいた。私と同じテレビ離れが進行している若者たちは日本の情勢を理解しているのか、これからの問題を一緒に問いたい。その為に、インフォグラフィックスも用い、誰でも視覚的に楽しめる映像を考えて制作した。長い作品では飽きられてしまう可能性があるのでショート映像ほどの作品に仕上げ内容もループするようにしている。また、可愛らしい映像の中に実写を取り入れる事でより現実に起きている事だと視聴者に提示する仕組みだ。この作品を見たすべての人に新しい発見、そして自身の意見を確立手段になる事が最終目標である。

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卒業制作展2022 作品解説その6

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、大宅美沙希さんによる作品解説です。(以下は本人)

「自己報道」大宅美沙希
(手法:モニター映像、紙)

「自己報道」は、映像作品「自己報道ニュース」、新聞型作品「自己報道新聞」の二つからなる作品群である。これらは、主に大学に在籍していた4年の間で自分の身の回りで起こったことを記事として報道する作品である。

 「自己報道ニュース」と「自己報道新聞」、どちらもやっていることの本質は「ねえねえ聞いて!今日ね、こんなことがあったの!」と話しかける子どもとさほど変わらない。そして子どもならともかく、いい歳した大学生が見ず知らずの他人にこのような話題でいきなり話しかけるのは、不審に受け取られる可能性がある。しかし、「報道」の形をとることによって、違和感なく見る人に自分のことを伝えることができる。ニュースや新聞を通して記事という媒体を通して伝える「大人っぽいこと」と、最近あったことをお話しする「子どもっぽいこと」のギャップを狙ったものがこの作品群である。そのギャップを見て(あるいは聞いて)、「くだらんなあ……」と苦笑していただけると幸いである。

「自己報道ニュース」

 ニュース記事、週間メンタル予報、(存在しない)ドキュメンタリー番組の予告で構成されている約4分の映像作品。アナウンサー、お天気キャスター、ドキュメンタリー予告に映る主人公も全て作者自身が演じる。

「自己報道新聞」

 ニュースの尺では伝えきれなかった多くの記事を、8面構成の新聞にまとめている。天気予報を模して最近のメンタルのアップダウンの報告、テレビ欄を模して作者自身の22年間の人生の略歴を記している。この作品は手に取って読み、実際に持ち帰ることができる。

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卒業制作展2022 作品解説その5

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、猪俣佳歩さんによる作品解説です。(以下は本人)

「1000年後」猪俣佳歩

(手法:本、光沢紙、インクジェット、モニター映像)

私の作品は、”ある日誰かによって発掘された1000年前の本”というテーマで制作したものです。

世界観の設定としては、今現存している文明が滅びた後、1から生物が生まれ、進化していった未来を想定しています。

作品をご覧になった方の中には、私と同じく、未来の生き物、植物を想像したことがあるという人もいらっしゃるのではないでしょうか?

作品を見ながら、そういった想像を思い出したり、今、その場で想像していただけるとより作品を楽しめるのではないかと思います。

作品内の生物について、あまりデフォルメされたキャラクターのようにならず、リアリティーのある見た目にしようと考えていました。

そのため、背景にmidjourneyを使用した画像を用いたり、現実の生き物をモチーフにし、混ぜることで存在感をだそうとしました。

また、生物の習性や基本的な行動を考え、一緒に記述し、図鑑の形式にしました。

プランクトンが現在の生物の形をしていたり、海には1体の生物しか存在しなかったり、科学的根拠はなく、私の想像ですが、楽しんでいただけると幸いです。

それに合わせて、展示している場所も特別感を出したいと思ったので、暗幕で部屋を暗くし、暖色のライトで一部を照らすことで雰囲気が出るようにしました。

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卒業制作展2022 作品解説その4

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、財津邦央さんによる作品解説です。(以下は本人)

「奇怪人 クラウン」財津邦央

「右と左」「朝と夜」「表と裏」・・・
全ての物事は必ず二つの側面を持っており、
その二つはまるでコインのように表裏一体になっている。
彼はある人間の「もう一つの側面」として誕生した。
その人間はどこにでもいる普通の人間だった。
・・・正確には普通の「側面」を被ってだけかもしれない
なぜ「普通」に生きなければいけないのか?道を外れることはいけないのか?
普通に生きるのが「正しい」と言えるのか?それ以外は「間違い」と言えるのか?
そもそもなぜ自分の意見は否定されるのか?自分はなぜ他人の意見を否定するのか?
「正しい」「正しくないの基準ってなんだ?他の人はそれを持っているのか?
なぜ自分は・・・、なぜ人は戦・・・、なぜ%(は&‘’・・・?
そういった悩みが知らず知らずのうちに蓄積し、限界まで達したとき、
「そいつ」は生まれた。
名は「ウラクン」
混沌の象徴として「嵐」の意であるウラカン(HURACÁN)からきている。
「旅客機」と「戦闘機」、「乗用車」と「装甲車」など
正反対の性格をもつ乗り物がイメージに組み込まれている。
そいついわく使い方で「善」にも「悪」にもなり得る「モノ」の象徴らしい。
目はシートベルトで目をふさぎ、唇は後ろにあるはずのテールライトで構成されておりどことなくピエロのような外見となっている。
そいつは自分を「ヒーローでもヴィランでもない」と称している。
特にそいつはよくこう話している。
『オレは今一度「表裏一体」というものを考えてほしくて出現したんだ。
右(R)になれば王冠(CROWN)、左(L)になれば道化師(CLOWN)になる。
たった1文字の違いで正反対の身分になれるんだ。
 でも正反対になるのはオレの名前だけじゃない。
 ちょっと視点を変えるだけで「善」は「悪」にだってなりうるんだ。

 

 お前が普段持っている考えた意見、それは本当に正しいのかい?」

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卒業制作展2022 作品解説その3

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、後藤龍輝さんによる作品解説です。(以下は本人)

「手水手」後藤龍輝
(手法:インスタレーション、プロジェクション映像、モニター映像)

新型コロナウイルスが蔓延してから数年たった今、ある種の強迫観念のもと手を洗う行為がより身近になったと感じる。しかし日本では古来より手を洗う習慣があった。歴史をさかのぼってみると、日本に手洗いの習慣が生まれたのは3世紀中ごろ~4世紀(古墳時代)だといわれている。この時手洗いの習慣が生まれた理由は「疫病」だった。コロナウイルスが流行している現代と同じである。しかし昔は医学が発達していなかったため、細菌やウイルスを洗い流すために手を洗うのではなく、神に祈るために身を清める意で手を洗うようになり、習慣と化した。

同じ手を洗うという行為でも、まったく別の意味を持っている。たとえ手を洗う理由が同じ「疫病から身を守るため」であったとしても。このことから見えてくる手を洗う意味の「変遷」に私は妙な寂しさを覚えた。身を清めるために、神に祈るためにと健気な思いで洗っていた手はいつの間にか医学的根拠によってウイルスを落とすための作業として洗うようになり、その意識が強迫観念となって「手洗い」にまとわりついている。

今回の作品の真ん中に設置されているオブジェクトは「身を清める」と「ウイルスを落とす」手洗いの中間に位置するものだと私はとらえている。御手水で何かにとりつかれたように手を洗い続ける人間の映像と様々なところで流しっぱなしになっている水の映像。そして中間に位置するオブジェクト。これらが絡み合い落ちていく水は地へ帰り、循環する。私が新型コロナウイルスを患ったことなど無視をするように。

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卒業制作展2022 作品解説その2

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、北村安未さんによる作品解説です。(以下は本人)

「感覚に寄せて」北村安未
(手法:VR空間、テキスト、音声、VRヘッドセット、壁面シール、iPad)

自分の感覚と記憶に関する思いをテーマに作品を制作した。壁面には私の今まで印象に残った感覚や、感じるものに対する思いを書き綴った文章を文字をシールにして貼っている。文章は4つあり、それぞれのテーマは「夏の朝の記憶」「冬の光」「怖いもの」「故郷の匂い」である。これらは私の今まで感じた事であり、私の考えであるので個人的な感想だ。そのため、鑑賞者によって共感したり、共感できなかったりがあると思う。しかし、共感を得られなくとも私の文章を読み、自分の中で感覚を想像したり自分の中の感覚を振り返る事で後述するテーマにも繋がっていく。

部屋の中央にはVRヘッドセットと映像がある。映像は私の感覚に関する考えに関する文章とそれを読み上げるナレーションだ。この文章では「感覚の記憶」に関して記述してる。私の考えとして、感じ取ったものによって視野が広がり、人の価値観は変化したり成長していくと考えている。しかし、感覚は意識しないと感じず、忘れてしまう。そして感覚を思い出した時になんとなくで感じたものを補完・美化してしまう。VRヘッドセットでは森林の風景が体験できる。しかし、その映像はCGでできたものであり、本物ではない。その本物ではないVRや想像させる文章を通し、自分の感覚を思い出し感覚について今一度考えてもらう、寄り添ってもらうことで自分の感じるものをより鮮明にしてもらう事がこの作品の目的である。

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卒業制作展2022 作品解説その1

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、大部菜々さんによる作品解説です。(以下は本人)

「歪む」大部菜々
(手法:プロジェクション映像、モニター映像、アニメーション、AI描画)

夜の海、スノーノイズ、長いトンネルなど、これらを眺めている時に陥る”境界線が曖昧になり、吸い込まれる感覚”をテーマにホラーアニメーションを制作した。

本作の手法として、手書きアニメーションの他に自動画像生成AIを用いている。

自動画像生成AIの特性の一つとして、画像を元にした類似画像の生成がある。この生成する行為を繰り返し行い、画像を繋げていくことで、脳が認識する前に対象のモノが形を変えていく不思議な感覚に陥る映像を作ることができた。

また、本作品の背景も全て自動画像生成AIで作られている。AIを採用した理由は2つある。

1つ目は、既視感を演出するためだ。

既視感を感じることで、この恐怖は自分の日常にも潜んでいるかもしれないと錯覚する。

自動画像生成AIは、インターネットで収集した画像も含め、膨大な画像データセットを学習している。その為、誰もが既視感のある風景画像を作ることができると考えた。

2つ目は、アニメ業界における効率化だ。

今日におけるアニメーターの多くが同時進行で複数の作品を担当しており、一人一人の負担が重たくなっている。こうした過酷な労働環境では、作品のクオリティを上げていくことはおろか、人材を育成していくことすら難しい。

AI画像生成技術を導入する事で、単純な作画作業から解放され、人間にしかできない表現に注力することができるのではないだろうか。

あくまでも選択肢の一つに過ぎないが、最新のツールを用いたアニメーションの可能性について考えほしく、AIを使用した。

この映像を通して、自分の意思と反して吸い込まれていく感覚や自動画像生成AIで作る映像の可能性を感じていただきたい。