「Parallel Lines」
作:藤田和奏
本作品は、アメリカ・韓国・中国という、文化も社会システムも異なる3つの国で記録した日常の断片を、再構築したメディアアートである。画面を3分割し、それぞれの都市の風景を同時に提示することで、観客は異なる時空を一度に旅する体験をすることになる。

一見すると、街に溢れる看板の文字、行き交う人々の装い、聞こえてくる言語には明らかな「違い」が存在する。しかし、それらを並行して見つめ続けると、不思議な共通点が浮かび上がってくる。揺れる車窓から見える街並みや、みんなで食事を囲む手元、暮れていく夕日。そこには、国境を越えて共鳴する「生活のリズム」が流れている。

私たちは普段、自らの日常を唯一無二のものとして生きているが、実は地球のどこかで、見知らぬ誰かが自分と同じような喜びや疲れを感じながら、並行した時間を歩んでいる。本作のラストシーン、帰路の機窓から見える空に添えたメッセージには、そんな「たとえ交わることのない平行な日常であっても、私たちは同じ空の下で共に生きている」という願いを込めた。
この映像を介した旅が、遠く離れた誰かの呼吸を、少しでも近くに感じるきっかけとなれば幸いである。

「しずかな通知音| Silent Ping」
作:富石悠加
本作は、現代に生きる女子高校生が、ふとしたきっかけで“過去からのメッセージ”を受け取るという一瞬の体験を通して、「戦争の記憶」と「現代のつながり方」について再認識していく短編アニメーションです。
物語は、日常の中で平和学習の大切さがわからず、スマートフォンを手放せない少女に届く、ひとつの“しずかな通知音”をきっかけに始まります。
その通知には、かつてこの地に生きていた誰かの「声」が含まれており、それは1945年8月6日、原爆投下直前の広島からのものでした。
直接的な描写を避けながらも、戦争によって奪われた“当たり前の日常”を、現代の視点から静かに描いています。

戦後80年、戦争経験を知る人が少なくなった今、私たち若者にできることはなんだろうと考えました。そこで、SNSやスマホが当たり前となった今だからこそ、昔よりも多くの、世界の人に、私たちの言葉を届けることができる。私たちにしか届けられない声もあるのではないかと考えました。距離も時間も越えて昔の「想い」が現代に届くという、非現実的な話ではありますが、私たちはそれを世界に向けて発信することができるというメッセージを、印象的な静寂と、淡い色彩表現、繊細なアニメーションで表現しています。未来へと記憶をつないでいく作品です。


