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ゼミ生 卒業制作・論文

2023年度卒業制作展 作品紹介1

「避難経路」

作:友松温奈

この作品のコンセプトは『日々ときどき感じる漠然とした不安感への向き合い方を考える』というもの。

私自身、昨年がすごく後悔の残る一年かつ自分の無力感を深く見つめた一年でもあった。

毎日毎日朝が来るのが怖くて、いつまでも眠ることができない。何かをしないといけないけれど、何をすれば良いのかわからない。そういった不安感、焦燥感を作品に落とし込みたかった。そしてこの作品はこの不安感との向き合い方である。作品内の挨拶にもあるように、「避難経路」というのは逃げる道を知っておくことと、その後戻ってくる道を確保しておくこと。身体も精神も健康に過ごすには如何に元の日常に戻ってこれるか、であると思う。なので作品名を避難経路とした。

また、映像をWEBサイトに埋め込み、インタラクティブコンテンツとすることによって、観覧者が、私の思う物語をただなぞるのではなく、自分で選択して物語を進められるようにした。そうしたのは、先ほど記した避難経路は人によって違うもので、それぞれが経路が欲しいなら確保しなければならないものである。そのため、5つのどこか繋がっている映像を自分で選択して視聴できるようにWEBサイトの構築をおこなった。

ぜひ恐る恐るでも良いので自分で選択をし、作品に埋め込まれた私の意図を考えながら視聴してもらいたい。

「止まり木」

作:中村未来

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蝶に気を取られるうちに、母キツネとはぐれてひとりぼっちになった子キツネの物語です。

本作は、安らぎを与えてくれる存在との決別、そして新たな出会いをテーマに描きました。このテーマは、「止まり木」のような存在を失ってしまったら、と考えた経験から発想しました。私にとっての止まり木は母です。悩んだり辛い時、いつも私の心を癒してくれる心の拠り所です。しかし、母の病気をきっかけに、その存在を喪失する不安に襲われました。自分にとっての止まり木がなくなってしまったら、自分はどこへ向かえばいいのか、どのように生きていけばいいのか、不安と恐怖でいっぱいになりました。いつか来る別れに対する恐怖と向き合う中で、決別を乗り越えた先には希望があることを信じたいという思いが生まれ、この作品を制作しました。

本作は、CLIP STUDIO、Premiere Pro、After Effectsを使用して制作した手描きアニメーションです。めくるたびに雰囲気が変わる絵本のような、温かみのある映像を目指しました。制作において意識した点は場面ごとに異なる色彩表現です。子キツネが母キツネとはぐれたことに気づいたシーンは色褪せた色使い、恐怖の中森を歩くシーンはモノクロ基調、安息の場所を見つけたシーンは鮮やかで光を感じる色彩を用いることで、子キツネの感情の変化を視覚的に表現しました。

人は誰しも、心の拠り所となるような存在を求めています。しかし、人生は変化の連続で、その存在と別れる時は必ずやってきます。この作品が、自分にとっての止まり木について考えるきっかけになれば幸いです。