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卒業制作・論文

卒業制作展2022 作品解説その1

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、大部菜々さんによる作品解説です。(以下は本人)

「歪む」大部菜々
(手法:プロジェクション映像、モニター映像、アニメーション、AI描画)

夜の海、スノーノイズ、長いトンネルなど、これらを眺めている時に陥る”境界線が曖昧になり、吸い込まれる感覚”をテーマにホラーアニメーションを制作した。

本作の手法として、手書きアニメーションの他に自動画像生成AIを用いている。

自動画像生成AIの特性の一つとして、画像を元にした類似画像の生成がある。この生成する行為を繰り返し行い、画像を繋げていくことで、脳が認識する前に対象のモノが形を変えていく不思議な感覚に陥る映像を作ることができた。

また、本作品の背景も全て自動画像生成AIで作られている。AIを採用した理由は2つある。

1つ目は、既視感を演出するためだ。

既視感を感じることで、この恐怖は自分の日常にも潜んでいるかもしれないと錯覚する。

自動画像生成AIは、インターネットで収集した画像も含め、膨大な画像データセットを学習している。その為、誰もが既視感のある風景画像を作ることができると考えた。

2つ目は、アニメ業界における効率化だ。

今日におけるアニメーターの多くが同時進行で複数の作品を担当しており、一人一人の負担が重たくなっている。こうした過酷な労働環境では、作品のクオリティを上げていくことはおろか、人材を育成していくことすら難しい。

AI画像生成技術を導入する事で、単純な作画作業から解放され、人間にしかできない表現に注力することができるのではないだろうか。

あくまでも選択肢の一つに過ぎないが、最新のツールを用いたアニメーションの可能性について考えほしく、AIを使用した。

この映像を通して、自分の意思と反して吸い込まれていく感覚や自動画像生成AIで作る映像の可能性を感じていただきたい。