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卒業制作・論文

卒業制作展2022 作品解説その3

この記事は、2022年度卒業制作作品の作者による解説を紹介しているものです。今回は、後藤龍輝さんによる作品解説です。(以下は本人)

「手水手」後藤龍輝
(手法:インスタレーション、プロジェクション映像、モニター映像)

新型コロナウイルスが蔓延してから数年たった今、ある種の強迫観念のもと手を洗う行為がより身近になったと感じる。しかし日本では古来より手を洗う習慣があった。歴史をさかのぼってみると、日本に手洗いの習慣が生まれたのは3世紀中ごろ~4世紀(古墳時代)だといわれている。この時手洗いの習慣が生まれた理由は「疫病」だった。コロナウイルスが流行している現代と同じである。しかし昔は医学が発達していなかったため、細菌やウイルスを洗い流すために手を洗うのではなく、神に祈るために身を清める意で手を洗うようになり、習慣と化した。

同じ手を洗うという行為でも、まったく別の意味を持っている。たとえ手を洗う理由が同じ「疫病から身を守るため」であったとしても。このことから見えてくる手を洗う意味の「変遷」に私は妙な寂しさを覚えた。身を清めるために、神に祈るためにと健気な思いで洗っていた手はいつの間にか医学的根拠によってウイルスを落とすための作業として洗うようになり、その意識が強迫観念となって「手洗い」にまとわりついている。

今回の作品の真ん中に設置されているオブジェクトは「身を清める」と「ウイルスを落とす」手洗いの中間に位置するものだと私はとらえている。御手水で何かにとりつかれたように手を洗い続ける人間の映像と様々なところで流しっぱなしになっている水の映像。そして中間に位置するオブジェクト。これらが絡み合い落ちていく水は地へ帰り、循環する。私が新型コロナウイルスを患ったことなど無視をするように。